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『残り者』を読んでみました(ネタバレなし)  ~朝井まかて~

『残り者』を読んでみました。

2016年5月に出版された本です。
江戸時代の心温まる人情ものを得意とされる作家さんで、現代人の感覚でも共感できてしまう女性を書かれます。
著書はまだ数冊しか読んだことはありませんが、ちょっと重めの題材でも軽やかな文章で読ませてくれる実力派の作家さんです。

 

時は幕末、大政奉還により徳川家に江戸城の明け渡しが命じられます。
官軍に怯える女たちが我先にと退去して行く中、大奥に留まった5人の「残り者」がいました。
身分も出自も違う女たちが、それぞれの事情や思惑を胸に、明日は開城という最後の一夜を共に過ごします。
徳川の世が続いていれば言葉をかわすこともなかったはずの女たちが、胸の内を明かしあった後に起こした思いがけない行動とは・・・

 

大河ドラマ『篤姫』をはじめとして、過去に何度も描かれてきた江戸城無血開城の一幕。
将軍や御台所、維新の英雄などの視点ではなく、大奥で働いていた女たちの視点で書かれているのがおもしろいです。
現代の会社員のように、給料をもらって働いている女性が大奥にも大勢いたんだなあと、当然のことなのに改めて気づかされました。

将軍は生きており、昨日までと同じように城はそこにあるのに、「今日からお前たちは敗者だ!」と言われ、心の整理がつかなかった女たち。
一生を大奥に捧げると誓って生きてきたのに、ある日突然、住む場所も生きていく糧も失い、立ちつくしてしまった女たち。

一癖も二癖もある女たちが、心のままに、往生際悪くあがく様がなんとも滑稽でリアルでした。
「私たちにとって、この大奥こそが家にございました」
この一文こそが物語のすべてを語っていると思いました。

 

実を言うと、
私は歴史小説が大好きですが、幕末ものだけは嫌いです。
『日本の未来のために命をかけた男たち』みたいな英雄伝ばかりが目立つからです。

「結局、自分の正義を押し通すため、相手を力でねじ伏せようとしただけじゃない?
男たちがバカの一つ覚えみたいに血を流すから、女がいっぱい泣いたんだ!」

今作は、篤姫の器の大きさを再確認させられました。
何もできないイメージの和宮でさえ、徳川家断絶回避のために働き、その後の騒乱を防いでいます。
篤姫の腹心ともいえる中臈『ふき』もカッコ良かったし・・・
こんな小説がもっと増えたら、私の幕末嫌いも治るんだけどなあと、改めて考えさせられた痛快な1冊でした。

 

 

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