『津軽双花』を読んでみました(ネタバレあり)  ~葉室麟~

私の読書感想文

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『津軽双花』を読んでみました。

2016年7月に出版された本です。
女性が主人公の歴史小説は女性作家によるものが多いように思いますが、この葉室麟さんは主人公が男性、女性、両方のお話を書かれます。
どの作品も高潔、そして哀しいほどに不器用な愛情を持った主人公を書かれるので、私が好きな作家さんの1人です。

 

父・石田三成が斬首された後、津軽家二代・信枚(のぶひら)のもとへ正室として輿入れした辰姫。
仲睦まじい日々を送りますが、3年後、家康の養女・満天姫(まてひめ)が嫁いできたことで正室の座は奪われます。
正室だった誇りを忘れず、夫の愛情だけを信じてひたすら凛として生きる辰姫。

一方の満天姫も、継嗣騒動で離縁され、幼い息子を連れて実家に戻された過去があります。
家康の威光を使えば三成の娘など簡単に葬り去ることもできるのに、津軽家に尽くすことで夫の寵愛を得ようとする満天姫。
津軽の双花はそれぞれに宿命を受け止め、戦国の世を心を高くして生き抜いていきます。

 

この小説1番の見どころは、 辰姫の死の間際に満天姫が見舞いに訪れるシーン。
満天姫にも実子はいるのに、辰姫の一子平蔵に家督を継がせると約束します 。(後に本当に継がせます)

夫の心を独り占めしたいという女として当たり前の心と、藩主の妻としての矜持。
嫉妬や虚栄心を乗り越えて辿り着いた戦友のような心情が切ない。
同じ男を思うがゆえの共感なのか。
ドロドロの女のバトルになってもおかしくない設定なのに、どちらの姫も悪女に書かなかった葉室先生・・・ひたすら深いです。
ただ・・・
これだけおもしろい設定なのに、短編ゆえに中身が薄い。
2人の心情や夫・信枚の葛藤などがあまり書かれておらず、全てがきれいごとで流されてしまった印象は拭えません。
できることなら、いつか同じ話を長編小説として書いてみてほしいなあ。
しかし・・・
名花2輪に尽くされる男は、それ相応の器量が問われるものなのね。
二股かけて浮かれてる世のゲス男達に、是非とも読ませておきたい大人の1冊です。

 

蛇足ですが。
この本を読んで1番驚いたのは、石田三成の血統が津軽に残されていたという事実。
しかも、それを取り計らったのが秀吉の正妻である高台院だなんて・・・
なんだか胸がほっこりしてうれしくなってしまいました。

 

 

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