『九十九藤』を読んでみました(ネタバレなし)  ~ 西條奈加 ~

私の読書感想文

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『九十九藤』を読んでみました。

2016年2月に出版された本です。
西條奈加の本はまだ数えるほどしか読んでいませんが、『千年鬼』という本の世界観が大好きで、これからどんどん読んでみたいと思っている作家さんです。

 

東海道四日市宿の旅籠『小津屋』の跡取り娘として仕込まれ育ったお藤。
度重なる不幸の末に借金の形として売り飛ばされますが、女衒に連れられて歩く途中で逃げ出し、助けてくれた駿河屋のご隠居に頼み込んで江戸へ連れて行ってもらいます。
『小津屋』の再建を心に誓い駿河屋で頑張ってきたお藤は、その才覚が認められ、駿河屋の縁続きの口入屋『冬屋(かずらや)』の差配を任されます。

この時代の口入屋は、払いが悪く揉め事が多い武家奉公ばかり。
そこでお藤は傾いた店を救うため、武家奉公からは手を引いて、取り扱う客を商家に切り替えようとします。
しかし、荒くれ者ぞろいの口入屋の世界で、若い女が差配となってどれだけのことができるのか?
既得権益を守ろうと嫌がらせをしかける人宿組合の顔役たちばかりか、『冬屋』の番頭・手代達からも大きな反感を買う中、お藤の奮闘は続きます。

 

一応、女衒から逃げる時に助けてくれた百蔵さんとの恋愛話もありますが、根本は王道のサクセスストーリー兼江戸の人情ものという印象です。
才覚と度胸で数々の難題を1つ1つ切り抜けていくお藤の姿も良かったけど、天衣無縫にして美貌のご寮さん、仕事を求める男たちの鬼の指南役お兼さん、やり手なのか使えないのか今ひとつわからないお藤の雇い主太左衛門と、脇を固める個性的なキャラ達が本当に格好良かった。
ただそれだけに、お藤の想い人である百蔵さんは中途半端かなあ。
いい男に描こうと頑張ってるのは分かるんだけど、なんとなく優柔不断というか、まっすぐじゃないというか・・・
まあ、男性の好みは人それぞれ。これがいいっていう女性もいっぱいいるのでしょう。

 

今のところ、私の中での西條さんは『当たり外れの幅が大きい作家さん』という認識です。
基本的に言い回しが優しいのでどの作品もサクサク読めてしまいますが、ストーリーに起伏が少なく、読み終わってからも「・・・で?」っていう感想しか出てこない作品も見受けられるので。
時代物で人間の心の機微とかを書かれるのが1番お得意なんだろうな。
ところが!
この西條さんの最新作『刑罰0号』という作品の舞台は近未来。
被害者が持つ殺された時の恐怖の記憶を抽出・画像化し、加害者の脳内で再生することで恐怖を追経験させる機械「0号」。
死刑に代わる新たな刑罰として開発されたものの、実験は失敗に終わり、開発者は逮捕されてしまう・・・
まだ読みかけですが、ドラマティックなことこの上ない。
「こんな作品も書けるのか!」と、いい意味で予想を完全に裏切ってくれました。
次作以降が本当に楽しみな作家さんです。

 

 

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コメント

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