『扉は閉ざされたまま』を読んでみました。
2008年2月に出版された石持 浅海さんの初期作品。碓氷優佳シリーズの第1作です。
密室殺人を扱ったミステリーでありながら、密室トリックや犯人を暴くストーリーではありません。
最初から犯人が分かっている『古畑任三郎』のようなスタイルで、犯人の視点で物語は進んで行きます。
WOWOWですが、黒木メイサさんと中村俊介さんでドラマ化もされました。
この小説は、大学卒業後初めての同窓会、かわいがってきた後輩を殺すシーンから始まります。
犯人は遺体発見を遅らせるため、自然な流れの中で友人たちを誘導、死体がある部屋の扉を開けさせまいとします。
しかし、同窓会の参加者である碓氷優佳だけが細かなほころびを1つ1つ検証し、鋭い推理で犯人を追い詰めていきます。
この小説の肝は、『犯人は何故、扉が開かれる時間・・・死体が見つかる時間を気にしているのか』という点にあります。
それこそが殺人の動機、そして、ペンションという閉鎖空閑を殺人現場に選んだ理由として、ストーリー全体を支えているのです。
時間軸がぶれない上、登場人物は少なく、狭いペンションの中だけで完結するので全体のイメージもしやすい。
おかげで没頭して読めるので、数時間ほどで読み終えてしまいました。
これが石持さんだ。そう、これこそが石持浅海の真骨頂・・・なんだけど・・・う~ん。
なんだろう。なんだか釈然としない。
犯人を追い詰める過程で1度くらいはミスリードされるシーンがあってもいいのに、完璧な推理でサクサク追い詰めてしまう。
犯人と碓氷優佳に能力差があり過ぎて、犯人の知性が薄っぺらいものに見える。
殺人の動機に関しては賛否両論あるでしょう。それはまあいい。
ただ、碓氷優佳の人間性が好きになれない。
ミステリー小説で、トリックを暴いていく側のキャラクターが好きになれないのは致命的なような気がします。
ネタバレになるといけないので、これぐらいで。
石持さんの著書の中では、『座間味くんシリーズ』がやっぱり1番おもしろい。
座間味くんの新刊が読みたいです。
コメント
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