『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘」』を読んでみました。
2015年1月に出版された本で、web小説の書籍化です。
実は私、何故か電子書籍が嫌いで、よっぽど好きな作家さんの作品でない限りweb小説は読みません。
そんな私のこだわりをバッサリぶった切ってしまったのがこの作品です。
3度の飯よりも本が好きな普通の女子大生の麗乃(うらの)。
せっかく大学図書館への就職が決まっていたのに、地震で落ちてきた大量の本に押しつぶされて死んでしまいます。
この麗乃の記憶を残したまま転生したのが、見知らぬ世界の貧しい兵士の娘マイン(5歳)。
虚弱体質で自分1人では何もできない上、その世界は識字率も低く、高価な書物はいくら読みたくても手に入りません。
それどころか、まだ羊皮紙しか存在しないため、紙やインクさえもお金持ちにしか使えない高級品なのです・・・
マインは決意します。
本がないなら自分で作ればいい!
本に囲まれて生きるため、まずは紙を作るところから始めよう!
というのがこのストーリーの始まりなのですが、これだけ聞くと「本当におもしろいの?」と心配になる人も多そうです。
実際、私も最初の数10ページは「失敗したかな?」と思いながら読んでいました。
ところがこの作品、止めようと思っても切り上げどころが見つからない。
仕方がないので読み進めていくと、次がどうなるのかが気になって、ついつい引き込まれてしまうのです。
世界観がきっちりと作りこまれている上、散りばめられた伏線が徐々に明らかになっていく展開が見事で、知らないうちにツボにはまって抜け出せなくなっています。
しかも、それらが全てラノベ特有の軽い文体で書かれているため、飽きることなくサクサク読めてしまいます。
何より、主人公マインの思考回路は読んでいて痛快だし、猪突猛進して周り中から説教されまくるのもお約束で笑えます。
細かいところで気になる点はポロポロありますし、文章や行間に美しさが感じられないので、そういうことが気になる方には好まれないタイプの本だと思います。
ただ、もともと起承転結、喜怒哀楽がはっきりしたストーリーが好きな私に、「こういう日常の描き方もあるのか!」と気づかせてくれた新しいタイプの転生ものです。
現在は第2部まで発刊されていますが、ストーリー性やファンタジー色は第1部よりも更に強くなっています。
作者の力量がどんどん上がっているのは確かなので、この先、どんな展開になっていくのかが本当に楽しみです。
何より、読書好きの人なら共感せずにはいられない内容となっているので、是非とも読んでみて頂きたい作品です。
(注)ちなみに、web版をアチコチ編集されているようなので、そちらのファンの方には若干残念感が残る作品なのかもしれません。
2016年9月には新刊『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女」』も発売されるようです。
他にも読みたい本は溜まっているのに、「発売までに第二部を読み終わらなくちゃ」と無駄に頑張る今日この頃です。
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