『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」』を読んでみました(ネタバレなし) ~ 香月 美夜 ~

私の読書感想文

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『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」』を読んでみました。

2017年3月に出版された本で、領主の養女編も3作目です。
この本をきっかけに異世界転生モノを何冊も読みましたが、やっぱりこのシリーズが1番おもしろい。
ストーリーの展開力や緻密な描写力に加え、世界観の大きさは新人のものとはとても思えません。
何より、主人公の本への執着は、本好きには心くすぐられる納得の秀作です。

 

神殿長として洗礼式や奉納式に参加したり、領主の養女として貴族院入学前の子供を集めて学力向上のための指導をしたりと、ローゼマインは城と神殿を行き来する慌しい冬を送っています。
また、グーテンベルク達と印刷機の改良に挑んだり、城で絵本の販売をするなど、本への愛情もとどまるところを知りません。
一方、今回の薬の素材採集は、シュネティルムの魔石とフリュートレーネの夜にとれるライレーネの蜜。
神具ライデンシャフトの槍を武器に冬の主の討伐を行ったり、春の女神の水浴場でファンタジーな夜をすごしたりと、ローゼマインの新たな素材採集は続いていきます。

 

う~ん…
今作もローゼマインは虚弱な身体で頑張っていますが、少し盛り上がりに欠けた気がします。
次作は2年間の眠りにつくまでの怒涛の展開となるので、その前の中だるみかな?という感じです。

 

とはいえ、今作も冬のお披露目会や祈念式、貴族の子供たちや護衛兵士アンゲリカの学力向上計画、薬の素材採集と、時々やらかしながらもローゼマインは大活躍です。
ハッセへの処罰も終わりましたが、貴族と平民の間にはこれほどの身分差があるのかと、強く考えさせられるエピソードでした。
自分の価値観がまるで通じない貴族の常識に立ちすくむローゼマイン。
しかも、処刑の一部始終がかなり丁寧に語られるので…結構エゲツなかったです。
お父さん(ギュンター)のマントがあって本当に良かったと思いました。

 

また、ストーリーがどんどん進む中で、ローゼマイン以外の視点で描かれるエピソードが秀逸です。
フランやエックハルト、ランプレヒトが見るローゼマインを取り巻く環境は、それぞれの思惑も交じるので結構粘着感があり、思わずハッとさせられてしまう場面も見受けられました。
また、本編では説明が少なかったインゴの必死さも、インゴ目線で描かれた短編のおかげで納得できました。
web版よりも人物像に深みが感じられるので、書籍も買わずにはいられない気持ちにさせられます。

 

 

それから、ローゼマインとフェルディナンド様の関係も静かに深まっています。
今までは完全に『生徒と先生』でしたが、最終的に愛し合うようになる前フリが初めて垣間見えた気がしました。
不幸な生い立ちから警戒心が強いフェルディナンド様。
そのフェルディナンド様が、ローゼマインの料理やお菓子に対して毒殺の危険性を考えもしていない…
エックハルトの目線でサラッと描かれていますが、私には今作1番の感動シーンでした。

 

とうとうweb版のお話が完結してしまいました。
最後の最後にやっつけ仕事感があって残念な気もしましたが、ローゼマインとフェルディナンド様の親愛がとても深く描かれているので、胸の奥がホワッと暖かくなるような気持ちになりました。

ローゼマインの活躍は未だ道半ばだし、フェルディナンド様との夫婦生活もこれからです。
いつかまた、香月先生が続きを書き始める気持ちになって下さることを、気長に待ちたいと思います。

 

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