『はむ・はたる』を読んでみました。
2012年3月に出版された本で、『烏金』の続編です。
西條奈加さんの本はまだ数えるほどしか読んでいませんが、私が今1番気になっている作家さんの1人です。
『烏金』は随分前に読んでいましたが続編が出ているとは知らず、今回たまたま目について借りてきた本が続編だったので驚きました。
『烏金』の主役だった浅吉は名前がチラッと出るだけで、今作は浅吉が助けた子供たちが主役です。
浮浪児だった15人の子供たちは、全員が掏摸やかっぱらいから足を洗い、稲荷ずし売りや金貸しの助手などのまっとうな商いを始めています。
次々と小さな事件に巻き込まれながらも、厳しくも温かい長谷部家の人々や、高利貸しのお吟らに見守られ、持ち前の機転と団結力で奮闘するお話となっています。
今作では、2年ぶりに旅から帰ってきた長谷部家次男の柾も登場しています。
ところが、実はその柾にも難しい事情が隠されているようで…
今作は短編で構成されていて、それぞれが違う子供の主観から語られています。
知恵や機転に溢れた勝平、穏やかで思慮深い天平、大人びて肝のすわった登美、自己中で少しわがままな伊根などなど、性格が全く違う子供たちがそれぞれの語り口で話を進めていくので、1篇1篇に個性があっておもしろい。
しかも、バラバラな個性の短編を集めているのに、1冊の本としてなんの違和感も感じさせないところがスゴイ!
全体が軽い感じで書かれているのであまり目立ちませんが、作家さんの緻密な計算が垣間見える作品でした。
ちなみに、タイトルの『はむ・はたる』は、フランス語の『ファム・ファタール』。
カルメンやマノン・レスコーのような『男を惑わす女』のことだそうです。
何故、江戸時代の子供たちのお話なのにそんなタイトルがつけられているかは、ネタバレになるので書かずにおきます。
前作『烏金』とは路線が違うような気もしますが、江戸の人情ものとしてこれはこれでおもしろい。
『烏金』をまだ読んでいない人でも、十分に楽しめる1冊です。
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